第26回 第4回中国中部投資貿易博覧会に参加して



 ゴールディーンウィークも足早に過ぎ、五月も半ばに差し掛かりましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。筆者は、3月下旬から4月末の1ヶ月余りの間に3回中国に出張してきたところであり、このような頻度での出張は初めてであった。瀋陽、北京、上海、寧波、合肥を訪れたが、今回は、要請を受けて参加した第4回「中国中部投資貿易博覧会」(以下「中国中部博覧会」という)についてお伝えしたいと思う。


 去る4月26日、中国安徽省の省都である合肥市にある安徽国際展示センターにて、第4回中国中部博覧会が開幕された。同博覧会は中国国務院の認定によるもので、中国商務省をはじめ、国家税務総局、国家工商総局、国家ラジオテレビ総局、国家観光局、中国国際貿易促進委員会、全国工業商業連合会、中国工業経済連合会などの中央省庁や関連団体、及び中部6省の政府が共同で開催する博覧会である。第1回は湖南省長沙市、第2回は河南省鄭州市、第3回は湖北省武漢市、そして第4回にあたる今回は安徽省合肥市で開催された。


第4回中国中部博覧会開幕式
:第4回中国中部博覧会開幕式

 ところで、中部6省とはどこを指しているのか。これは中国の中部地方にある山西省、安徽省、江西省、河南省、湖北省、湖南省を指し、その総面積は102.8万ku、総人口は3.61億人に達する。中国の内陸中心部に位置していることからロケーションに恵まれており、東西南北のどの方面からもアクセスしやすいことが特徴である。自然・文化・観光資源も豊かで基礎科学教育も充実し、中国の重要な農産物、エネルギー、原材料およびプラント設備の製造業基地ともいわれている。


 2005年、中国政府が沿海地域先行戦略、東北地方振興戦略及び西部大開発戦略と同様なレベルの国策として、中部6省を振興させるために「中部勃興戦略」を策定した。中国中部博覧会はこの中部勃興戦略の一環として実施されるものであり、中部地方が内包している経済的ポテンシャルを広くPRし、日本を含む世界各国の企業の貿易投資を促進することを目的としている。


 第4回に当たる今年の中国中部博覧会の開幕式には第3回と同様、中国国務院の王岐山副首相をはじめ、多くの中央要人や海外からの貴賓が登場した。


 同博覧会は投資促進、貿易商談、観光PRといった多目的で展開しているほか、その主題に基づき、中部フォーラム、「万商西進」(万を超える企業が西へ進出)ハイレベルフォーラム、市長と多国籍企業フォーラム、国際金融フォーラム、国際アニメ産業ハイレベルフォーラムが開かれた。また、サービスアウトソーシング政策シンポジウム、国際投資マッチング大会、国際買付商談会といったイベントも開催され、各界来賓と企業家が深く交流する場となった。


市長と多国籍企業フォーラム
:市長と多国籍企業フォーラム

 ちなみに、2006年9月に湖南省長沙市で開催された第1回中国中部博覧会の際は、日本経済産業省と国土交通省の協力のもと1,000名以上の訪中団が組まれたが、当時の二階堂経済産業大臣は、国会召集に間に合うようにとんぼ返りの形となっても参加されたというどこかの報道が記憶に残っている。


 中部博覧会にはいったいどのような期待が寄せられているか。これについてジェトロ北京センター所長・江原規由氏は数年前次のように述べた。


 「中部崛起は『承東西進、聯南貫北』を目指すとしており、各地域発展戦略を経済・産業的に有機連携させようという歴史的使命をもって登場したということになる。(中略)中部地方では、省都六都市を中心に、今後都市化が急速に進められる。これにより、膨大な農村の余剰労働力の吸収やサービス産業などの発展が期待されている。都市化は、交通網の整備やスピードアップ化を伴うわけであるから、『中部崛起』は中国内部の時間的距離と経済的距離を一段と縮め、経済効率を大いに高めると期待されている。」


 中部地域を訪れる際に、まさにこのようなことが実現されつつあると実感するのは筆者だけであろうか。地域間における生産要素や産業の移転、めまぐるしく変化するチャンスといった中部地域の強みを最大限に活かしつつ、対外開放を拡大し、国際交流・協力を促進する重要なステージが築かれることにより、日本関係者にとっても今後多様なビジネスチャンスが到来するであろう。


 第4回中国中部博覧会の来賓は1.6万人に達した。4月21日までにカミンズ、ボーイング、カルフール、IBMを含む世界上位500社及び多国籍企業大手300社が参会し、国内企業上位500社中160社余りも出席した。


 26日、第4回中国中部博覧会ハイレベルフォーラムでスピーチを行う中国の王岐山副首相は、「中国中部地域の振興を促進することは中国の長期的な発展戦略であり、この地域の食糧、エネルギー、原材料、製造業、交通運輸中枢の構築を加速し、経済の急速な発展を推進しなければならない」と述べられ、「中部勃興戦略」の持続性や強い期待感を改めて表明した。


 有難いことに、筆者は第4回中国中部博覧会の前夜祭にも招かれ、中部6省の政府及び商務庁トップ、そして各地域からの代表と一堂して歓談や情報交換をすることができた。また、26日午後の「国際投資マッチング大会」に参加し、人、人、人で埋め尽くされている会場では、多様な投資を求めるハイテク産業や文化産業関連の関係者に包囲されて、アピールや自薦を必死に展開する 方々の熱気に圧倒されてしまいそうになった。


前夜祭の一環としての記念ショーのワンシーン
:前夜祭の一環としての記念ショーのワンシーン

 沿海地域よりも「中部」の方が熱い!沿海地域から「中部」への産業移転は熱い!これからの投資先は「中部」だ!とは最近よく聞かれるが、言葉だけはなかなか伝わりにくい熱風を強く実感する旅であった。では、中部地域が期待を置くものとはいったい何なのだろうか。これについては今後の連載等で改めて紹介していきたい。


 


<了>



記事一覧へ