第23回 日本「天城越え」を観て、中国「火炬計画」を見る


NHK紅白歌合戦の「天城越え」を観て
新年あけましておめでとうございます!

 お正月期間中、めでたく晴天が続いていまして、野外活動にも絶好の日々と思われましたが、みなさんはいかがお過ごしでしたでしょうか。

大晦日の夜、いつからか、NHK紅白歌合戦を最初から最後まで見ることはなくなってきました。昨年末の大晦日、家内に「天城越えだよ」と言われて観たら、エレキギターの伴奏が始まり、ステージの後ろにある大画面には米国で活躍されているマリナーズ・イチロー選手の米球場での映像が流れ、北京オリンピックの開幕式の一幕を思い出すように、ステージの下から、石川さゆりさんがゆっくりと上へあがりながら、「隠し切れない移り香りが・・・」。

そのとき、好きな歌手の1人だからというより、場の雰囲気のデザインについて連想してしまいました。いや〜、エレキギター、米国で活躍されているイチロー選手、日本的な演歌、石川さゆりさん、こういう組合せに何かのイノベーションの種がないか、と思った(ちょっと大げさな言い方?)。

「天城越え」は昨年、通算3000安打&8年連続200安打を達成したマリナーズ・イチロー選手が打席に入る際のテーマ曲であり、当初マーティ・フリードマンがギター演奏したという。NHK紅白歌合戦のステージで演出された同曲を聴き、何かを目指して実現していくために「燃える」決心や、イノベーションの創出には有益な「異」の融合が魅力であるという意味を改めて感じさせられた時だった。

中国「火炬計画」実施20周年の季節
昨年のコラムの最終回で、筆者は次のようなことを書いた。「・・・。なぜ今(昨年12月)北京を訪れたのか、どこを訪問し、何をしていたのか、その一部については後日皆さんに紹介したいと考えている。・・・」

 2008年12月中旬、北京人民大会堂にて、中国「火炬計画」実施20周年の記念イベントが開幕された。「火炬計画」とは日本語で「タイマツ計画」とも伝えられているが、実は、この連載で一貫して伝えてきた中国ハイテク産業のさまざまな展開、成果そして動向というのは、中国「火炬計画」を挙げずに語るのは無理なものである。

 中国「火炬計画」とは1988年8月にスタートした中国ハイテク産業の開発、蓄積、振興を目的とする一大国家プロジェクトであり、「ハイテク成果の商品化、ハイテク商品の産業化、ハイテク産業の国際化」を促進することを目的とされている。主な分野は新素材、バイオ、電子・情報、光・機械・電子一体化、新エネルギー、高効率省エネ、環境保全などを指しているという。

 中国「火炬計画」は国策プロジェクトとして、1988年北京の「中関村」が中国初の国家ハイテク産業開発ゾーン(日本では「中関村ハイテク産業開発区」や「中関村サイエンスパーク」と称される場合もある。)と認定されて以来、2008年現在全国54の国家レベルのハイテク産業開発ゾーンがオープンし、200近くの国家レベルのハイテク創業サービスセンターが設立されたほか、国家大学サイエンスパーク、国家ソフトウェアパーク、国家火炬計画特色産業基地など、多彩な特別エリアが設けられている。

 まさに国内外の「異」の融合もこの発展を加速する大きな一因であり、54の国家ハイテク産業開発ゾーンの合計面積は一万分の三にもなっていないが、そこで創出されたGDPは中国全体の7.1%を占めているといい、実に巨大かつ多彩な成果といえよう。

JST中国総合研究センター第13回研究会
 既にご存知の方も居られるかと思うが、(独)日本科学技術振興機構(JST) 研究開発戦略センター中国総合研究センターは今月30日午後、「中国におけるハイテク産業パークの背景、現状及び最新動向」と題する第13回研究会を開催する予定であり、筆者もそこでお話する機会を頂いている。参加費は無料であるが、事前登録が必要だという。

近年、中国におけるハイテク産業は全体として高成長を続けるが、その鍵と見られる中国「国家ハイテク産業開発ゾーン」や「国家大学サイエンスパーク」、「国家インキュベーター」などといった「産学官連携ゾーン」が、我が国においても関係者の関心を集めている。一方、全国各地に3000箇所以上も存在すると言われるさまざまな特定エリアがあり、難解と思われる部分が多いことも指摘されている。

たとえば、そういうような中で、「国家ハイテク産業開発ゾーン」とはどのようなエリアか、大学サイエンスパーク等とはどのような関係にあるか、産学官連携やイノベーション、そして産業戦略のシフトにおける役割は何か、日本も含む外国からの投資はどのような状況にあるか、複雑に錯綜する関係性の中で展開されるその実態はどのようなものか、ハイテク企業の認定も含め、今後はどのような政策の下で動き続けるのか・・・。

一実務者の立場から、国家ハイテク産業開発ゾーンを中心にしながら、データ、写真、事例をもって、中国ハイテク産業パークの背景、現状及び最新動向を俯瞰的に紹介させて頂く予定である。ご関心を持たれる方はぜひ、直接下記研究会事務局までお問い合わせ下さい。

JST中国総合研究センター第13回研究会
http://www.spc.jst.go.jp/events/bosyu_090130.html

 それでは、本日の連載はこの辺で失礼したいが、皆さんにとって、より良い一年になりますように、心よりお祈り申し上げます!

<了>





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