第20回 上海タイフーン、上海ガニ、上海万博


NHK「上海タイフーン」を観て、なぜ泣いたか・・・
 「久しぶりハラハラ、ドキドキしながら夢中になりました。」
「世間の韓流スターブームにも乗れなかったのに、ピーターホー様(男性主人公・曹飛を演じる役者)には、すっかりいかれてしまいました。」
「上海タイフーンにはまってしまい、上海に来てしまいました・・・!!」
「2回目の書き込みです。掲示板も楽しみに覗いています。」
「何気なく見たのが、なぜかうきうきどきどきで最終回になり、今週はひどくさびしい土曜日になりました。早く再放送かDVDで会いたい。」・・・
 これは2008年10月18日に最終回が放送された、NHK6回連続ドラマ「上海タイフーン」の視聴者からの918件(2008年10月27日現在)に上る書き込みからの抜粋である。あっという間におわってしまったように感じる「上海タイフーン」は絶賛されている、と筆者も同感する。

 筆者は2回目からの視聴だったが、その後、思わず最終回まで観続けた。上海出身の筆者としては、厳しいコメントを言いたくなるところも若干あったが、およそ4万人の日本人が暮らしている、まさに熱い街・上海を舞台に物語が展開されるドラマが気になり、数々のシーンの中で懐かしい過去が浮かんでくると同時に、異文化ビジネスの戦場で様々な障害を乗り越えて戦っている女性主人公美鈴さんの姿、そして最終回、ついに美鈴さんと曹飛さんの心が解け合った瞬間、感動の涙を何度も流してしまった・・・。

 なぜか最近、上海を題材とする作品が多い。「上海タイフーン」に先立ち、世界的に大ヒットした「上海グランド」のリメイク版である連続ドラマ「新・上海グランド」はテレビ東京にて放送終了となったが、連載「上海甘苦」は日本経済新聞にていまも続いており、上海タイフーンよりも上海甘苦のほうが上海の実態に近いという友人も居る。上海は他の地域にない多様なローカル性を持つ開放都市としての歴史が長いが、より一層注目されるのは喜ばしいことであろう。

 ちなみに、上海タイフーンの原語・中国語は「上海潮」というタイトルであり、毎回放送の最初に、台湾出身の男性主人公を演じるピーターホーさんが中国語でナレーションしている。なかなかしぶい声で魅力満点だといってよいなぁと思う!どなたがその中国語の「潮」を日本語の「タイフーン」に訳すことにしたのかを知りたくなるが、妙に合っている気がする。ただ、赤い龍が力強く現れてくるのは「中国的」または「東北的」とは言えるが、「上海的」とはどうだろうか、と個人的に思っている。

 ところで、女性主人公・美鈴さんのお父さんの住むところのロケ地はドラマの中でも言われたように、上海から車で1時間程度行ける昆山市にある。歴史を感じさせる小さな石橋、軽い音が響く河の隣にある古い建物、素朴な人々が視聴者の旅心を動かしそうになるが、実は昆山市にはもっと重要な話がある。

「上海ガニ」を食べて、味より重要なのは・・・
 上海といえば、日本でもよく伝えられているように、毎年10月から12月までが「上海ガニ」旬の季節である。しかし、この連載の第4回でも触れたが、蟹の高級ブランドとしての上海ガニは実は上海産のものではなく、上海とは直接的な関係はなにもない。江蘇省昆山市で2番目に大きな町の巴城鎮、「湖光水色甲江南」の「陽澄湖」が本物の上海蟹の産地である。

 昆山市は近年「小上海」とも言われており、江蘇省の東玄関として、上海と蘇州のほぼ中間に位置し、一つの国家レベルの経済技術開発ゾーンと三つの省レベルの開発ゾーンをもつ経済開放の文化都市である。

 そういった投資環境の優位性から、華東地区の生産拠点またはサービス、流通の基地として、日系企業をはじめ多くの外資企業から注目されている。現在世界55ヶ国及び地区から5300社(またはプロジェクト)が昆山市に進出しており、日本からは、伊藤忠商事、三菱商事、三井物産、トヨタ自動織機、日本精工(NSK)、サントリービールなどが投資している。

 昆山市は2200年の歴史があり、ここを起源とする「昆曲」は京劇の原点であり、世界無形文化遺産に指定されている。昆山市の千年古鎮(町)「周庄」は「江南水郷」の代表とされており、中国有数の景勝地である。前出した巴城鎮出身の宇宙飛行士費俊龍氏は中国2度目の有人宇宙飛行船「神舟6号」に乗り、飛行指揮の任務をこなし、地元の誇りとなった。

 実は10月15日から「2008年昆山市金秋経済交流フェスティバル」が開催されることに続き、16日に「2008年巴城鎮招商日」が開催され、地元政府が総力を上げて、改革開放30年の成果と昆山市の魅力を展示し、大型文化イベント、産業フォーラムなどが盛大に行われた。招待されて現地入りした筆者は、2008昆山市金秋経済交流フェスティバルの期間中、「昆山空港産業セット基地」の建設を宣言する一幕も見た。



 日本人は上海ガニの美味しい食べ方になかなか馴染まないと思うし、本音で美味しかったよ!と思っている方がどれほど居られるかも知らない。このような十人十色のテーマについて議論する必要はないと思うが、現地で聞いた以下の話はさすがにインパクトがある、と思った。

 いわば「小上海」とも言われる昆山市の陽澄湖は本物の上海蟹が産まれるところであるが、実は中国の歴史上初めて蟹を食べたのは水害を退治しに来た「巴解」という勇士である。それまで誰も怖くて食べようとしなかった「虫」のようなカニを食べた「巴解」を記念する意味で、「蟹」という文字が作られたとの伝説がある。

 だから、陽澄湖産の本物の上海蟹は美味しいということだけに自慢するのではなく、陽澄湖で始めてカニを食べたという、誰もやろうとしないことに挑むチャレンジ精神が最も自慢することであり、イノベーションに取り込む人々には不可欠な精神だと認識しているという。国内外から数千人の来客の中、昆山市の発展ぶりに驚く人も多く、筆者も「中国100の強い県市ランキング」のトップにある昆山市の全景及び更なる発展に強い関心を持つようになった。

2年先の「上海万博」を想って、最近の動向は・・・
 上海といえば今、いうまでもなく2年先に開催される「上海万博」が国内外の関係者に期待されている。数年前、なんとかお休みを取って名古屋万博に行き、結局行列に長い時間が取られてしまったことを思い出すと、上海万博はどうなりそうかなぁ・・・と。

 上海万博は2010年5月1日から10月31日まで開催される。会場の計画面積は5.28平方キロで、参加国・国際機関200、入場者数7000万人を目標としている。色々な立場からさまざまな指摘も確かに存在しているが、北京オリンピックが大成功を収めた後、引き続いて上海万博も成功することを、筆者は期待したい。 などと考えていたら、次のことも思い出した。今年3月、北京で開催された第11期回全国人民代表大会(全人代、日本の「国会」に相当)第1回会議に出席している全人代代表で上海万博事務調整局局長の洪浩氏は6日、記者団のインタビューに、「2010年上海万博の準備作業は順調に進んでおり、今年9月から入場券を発売する」と明らかにし、さらに次のように述べた。

 これまでに196の国と国際機関が参加を確認し、ドイツ・ハノーバー万博の記録を更新した。万博の中国館、テーマ館、万博センター、万博村など、主催者が建設する展示場はすでに着工されている。省エネや公害防止、汚染排出削減などエコ万博の理念を万博会場や展示場の設計、建設の細部にわたって実現するという。

 また、太湖流域と長江流域の環境汚染問題については江蘇、浙江両省と共同で対策を講じ、長江デルタ地域の環境保護の質を高め、この万博を持続可能な発展をはかる有効なプラットホームにし、生態環境をより良好なものにし、人民の生活をより素晴らしいものにする、と宣言した。

 ところで、上海万博ネットによると、2008年10月27日午後、同万博日本産業館代表の堺屋太一氏一行が上海万博局を訪問した。前出の上海市人民政府副秘書長、上海万博事務調整局長の洪浩氏が日本からのゲストと会見し、双方は日本産業館の準備についての近況を情報交換したという。

洪氏によると、日本産業館が中国2010年上海万博に出展することを期待しており、それは中日両国の友好発展に特別な意義がある。万博組織者は出展側に条件を作り、各種のサービスを提供する。日本産業館が詳細について早めに実行し、契約に調印するよう期待する、と述べた。

これに対し、堺屋氏は「現在、経済は不景気だが、日本産業館の出展は着々と進んでいる。現在、デザイナーが素晴らしい案を提出しており、すべてのパビリオンが再利用できる。日本産業館を人気のあるものにすることに自信を持っている」と語った。これは2008年10月24日午後、共同通信社長の石川聡氏一行3人、神奈川県議会議員の鈴木恒夫氏と敷田博昭氏が別々で上海万博局を訪問したことに続く訪問だった。

 堺屋氏一行が日本産業館について話し合う訪問が行われたことは今後にとってどのような意味を持つか、北京オリンピックのように、上海万博はまたどのようなテクノロジーの夢とロマンを具現化してくれるか、そして上海万博は新たな「上海タイフーン」を引き起こせるか、その動きから目が離せないであろう。

 来週、昨年は147万人も来場された中国最大の農林水牧国際博覧会 〜 第15回中国楊凌農業ハイテク成果博覧会に行く。帰国後、またご報告します!

<了>


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