第1回 連載をスタートするにあたって
みなさん、はじめまして、技術経営創研の張輝でございます。出口さんにポンと背中を押された一瞬、「え、すぐですか」と思わず私の一言。1ヵ月60日と言われるこの年度末に、上野公園では桜満開となるこの季節に、連載をスタートしようと、執筆しはじめることになった。
出口さん、DNDと私
出口さんにお目にかかったのは4年前になるが、DNDメルマガの一愛読者としての筆者、「ぜひそのメルマガの数篇を拙著に転載させて頂けないか」と出口さんに許諾のお願いをしたところ、「まず一度会いましょうか」と出口さんからすぐにお電話を頂いた。
そして、何を言われるのかなぁ〜と少々不安な気持ちも持ちながらすぐ初対面となった。名刺交換、自己紹介、要件確認、留意事項、・・・、さくさくと話が流れていくと同時に、すぐにご快諾頂いた。DNDメルマガの行間から溢れている出口さんの人情味や洞察の鋭さに加え、魅力的な声や決断の速さも印象的でいまだに忘れられない。いや〜、今後も。
実際、その後、出口さんとたびたび頻繁に会っている、というわけでもないが、毎週水曜日は必ず会える!とメルマガを待つ。DNDメルマガと出会ってからは、そこに登場される各分野の多彩な方々との見えない対話?が展開されるような気がしており、色々と示唆等を頂いて尊敬の念で一杯である。
イノベーション・ジャパン2004の開催説明会でメロディーのような起伏のあるスピーチを聞かせて頂いた黒川先生、第1回日中ネットシンポジウムの特別インタビューに応じて頂き、人を元気にさせる石黒さん、日本における技術経営の牽引車的存在と思われる橋本さん、個人発明王レメルソン王国の破壊等を通じて米国特許の最前線を伝わって頂いている服部さん・・・。ありがとう!
私が持っている「杞憂」
筆者、日本に着てからあっという間に20年近くになった。「あいうえお」の勉強や新聞配達のアルバイトからはじまった滞日生活の中で、バブル経済の余波、阪神大震災の衝撃、消費税の登場、日韓ワールドカップの熱狂、国家知財戦略の策定など、時代の何かを象徴的に映す各々のシーンを実感してきた。
近頃、日中関係は明るい方向に変わりつつあるが、誤解から問題が生じ、また誤解によって拡大される側面もあることに気づいた。日本人と中国人は同じ漢字を使っても同じように感じをするとは限らない。また、変わり続ける中国を俯瞰する際にはどこに視点を置くかで見えるものが大きく変わる。多様なレベルでの日中間の相互「誤解」はこれ以上増えてはいけない。
日中関係とは別であるが、近年、日本では産官学の連携による技術経営の普及と人材の育成が押し進められている。またその隣接する事象として、大学発ベンチャーの話題も関係者の関心を集めている。しかし、どこか「ベンチャー=企業」より「大学発」が強調されすぎるような気もして、産官学連携が不可欠と思われるところでの「産」の観点が十分なのかが若干気になる。
あれ?「中国のイノベーション」についてなのに、なぜ日中関係や技術経営などという大げさな話までいうのか、というように思われる方が多くいらっしゃるかもしれない。失礼、そういう偉そうな話は当然できないが、筆者からのささやかな私見は次回から、とご理解頂ければ幸いである。
この連載の主眼や体裁
前項で二つの問題意識を例示したが、「近いのに遠く感じる中国」、「分かったか分かっていない中国」、「多彩なスープは透明でおいしいが政治はやや不透明な中国」・・・と、日本ではさまざまな感想がある中で、この連載はあくまでも「中国のイノベーション」に光を当てて提供させて頂ければと考えている。
イノベーションの定義によっては執筆の射程範囲が大きく変わるのもありうるが、筆者は「イノベーションとは技術の革新だけを指すものではない」との見解に立ち、この連載では具体的に、非常に重要であるのに日本ではまだよく伝えられていないと痛感している、中国におけるハイテク「産業の開発、集積及び発展」を基調にしつつ、その周辺も紹介していく予定である。
中国における53の国家ハイテク産業開発ゾーン、40余りの国家大学サイエンスパーク、29の国家ソフトウェア産業基地、135の国家インキュベータ・・・は一体どういう背景で、何を戦略に、どこまでイノベーションし、どこへ向かっているのか、日中間のどこがなぜどう違うのか、日本にとって参考になる点はないのか・・・、日中間の戦略的な互恵関係の具現化に資すれば喜ばしい。
また、出口さんから頂いたアドバイスで、具体的には随想や雑考、訪問インタビューや時流的なトピックなど、体験談や事例を盛り込み、体裁を固定せずに多様な形で提供させて頂くように目指し、「足で解読した現地情報」の一部としても御笑覧頂ければ幸いである。よかったらご期待下さいませ!
<了>
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