再度、朝河貫一先生、「驕る日本」と闘った男のこと



 朝河貫一先生については、私はその名著「日本の禍機」を「リーダーに不可欠な歴史観、世界観、志」というタイトルの3冊セットの書評で、このサイトの「articles、2004/02/01」で他の2冊、池上映子さんの「名誉と順応」、ジョンダワーMIT教授の「敗北を抱きしめて」とともに紹介しています。このときが朝河先生を私のサイトで始めて紹介しました。それ以来、このサイトのカラムで何回か朝河先生のことを紹介していますので「サーチ」してみてください。本当に素晴らしい、立派な方です。日本人で初めて米国の大学教授になった方、Yale大学の歴史学者です。2005年は、日露戦争終結、ポーツマス条約100年ということで、日本でも朝河先生関連の記事がそこかしこに見られました。朝河先生についての本についてはAmazonを見てください。また、Google, Yahooなどでも、いろいろ調べてみてください。

 今年、Yale 大学で開催された朝河先生のYale大学100年記念という趣旨の会議についてもご紹介しましたが、朝河先生のことを学術的な視点からもご紹介されている矢吹先生が、最近も学士会会報で講演されていますので、ご紹介します。私は、朝河先生が「日本の禍機」に先立つこと5年の1904年、日露衝突のさなかにこの衝突での日本の正当性を説かれる英語で書かれた「日露の衝突Russo-Japan Conflict」論文を、多分そうだったと思いますが、横浜市立大学の矢吹教授のwebsiteで見つけて読んだ記憶があります。

 なぜ、またまた朝河先生なのか。それは今の日本の状況が100年後になっても本質的にちっとも変わっていないと考えるからであり、今の日本をめぐる状況がある意味ではよく似ているようにも感じられるからです。今のようなグローバル時代にあっても、当時の朝河先生のような「「驕る日本」と闘った男―日露講話条約の舞台裏と朝河貫一」(清水 美和著)、最後の「日本人」―朝河貫一の生涯」(阿部 善雄 著)、このサイトにみるようなリーダー、そして学者も見当たらないように感じるからです。大体、学者の世界はより高い立場で、このような時にこそ、権力、政府、国民にもっと発言しなくてはいけないのです。朝河先生のような方はめったにあらわれるわけでないことはよく理解できますけれど。いまの大学は、何かといえば、大学は稼げとか、研究者の「インセンテイヴ」といえばお金の話ばかり。そんな卑しい人ばかりではありません。そんなことばかり言っている世の中に、誰が学校の先生になろうと思うでしょうか。ものさしは「お金で測れる」ことばかりなんて何かおかしいと思いませんか?学校もみんなで支え、先生を応援してこそ、子供たちも元気になるのです。これが教育の本質です。

 この朝河テーマでも、基本的に同じことを私は20年前から、何回も、発言や発信していますので、また考えてください。

 そして、この学士会会報で紹介している伊東さんの話も、いままで「大学入学試験へ向けた偏差値教育」でうまくいっていたと感じていた、しかしグローバル時代に明らかに転換期にある世界とその中の日本社会の、しかし、あまり認識されていない根源的な問題について触れていると思います。