Jeffrey Sachs教授とMillennium Village



 2000年に国連でMillennium Development Goals (MDG)が発表され、Columbia大学のJeffrey Sachs教授の指揮の下、2005年に「MDG報告書」が発表され、世界各国の2025年への目標が示されているところです(http://www.un.org/millenniumgoals/)。なかなか難しい目標ですが、世界の将来へむけた大きな提案であることは間違いありません。これをまとめたSachs氏のリーダーシップは心底、大したものと思います。

 彼とはこの1年、一緒に仕事をしています。「カラム2006/02/05」、また「ダボスから−4小泉改革等も話題に(2006/01/28)」などでも紹介していますが、2005年のダボス会議で出会ってから、お付き合いしています。彼のHPでも分かるように、たぐいまれな秀才、超人です。29才でHarvard大学の教授になり、ラテンアメリカ、ロシアなどの経済再建計画等に大きく貢献した世界的にも著名な経済学者です。去年は「The End of Poverty」という著書を出版し、これも世界で高く評価されています。邦訳「貧困の終焉」も出ています。彼の活動を見ると本当に信じられないでしょう、私にもですが。

 いつもニコニコして、あたりがやわらかく、偉そうなそぶりはまったくありません。今でも、多くの国の顧問をしていて、特に多くのアフリカ諸国の国家元首の顧問としても各国を飛び回っています。さらに、今年のBBCの「Reith Lecture」の栄誉を担っています。聞いたところ、もうすでに一回収録してと言っていました。

 その彼が3月4−6日東京に来ました。北欧、そしてBerlinからとんできたのです。この後はソウル、そして北京という行程だそうです。私にいろいろな会合をセットしてね、という連絡があり、それなりに大変でした。来訪の理由はもちろんアフリカ問題への日本の貢献への感謝と更なる応援のお願いですね。何故か分かりますか?彼は、この難しい目標を自分たちでも少しでも進めるために、Millennium Village Project (MVP)をはじめたのです。まず、エチオピア、ケニアで各一箇所です。 New York Academy of Sciencesにも「It Takes A Village」という感動的な記事があります。http://www.nyas.org/publications/updateUnbound.asp?updateID=83&page=1

 彼の奥さんはSonia Ehrlich Sachsと言います。Paul Ehrlichのひ孫です。Paul Ehrlichはご存知と思いますが、秦佐八郎を指導し、彼とともに感染症に有効な初めての化合物サルバルサン(梅毒の原因スピロヘータに対する特効薬です)を発見し、1908年にノーベル賞を受賞しています(http://nobelprize.org/nobel_prizes/medicine/laureates/1908/index.html)。Soniaは小児科のお医者さんでしたが、いまは公衆衛生MPHを取得し、MVPの指揮を執っています。すごいですね、本当に。

 ところが、2005年9月の国連のMillennium Summitで(もちろん、小泉総理も出席)日本政府だけが、さらに8箇所のMVPを支援すると申し出たのです。すごい国際貢献ですが、日本の新聞ではほとんど記事になりませんでした。国連総会の直前に「本当にすばらしい事、大感激だ」とSachsの仲間たちからメールが来て、それで私が知ったということなのです。以来、わたしはことあるごとに「MVPと日本の貢献」を国内外で話しているのです。

 日本のおかげで、SachsのMVPに資金が集まり、現在アフリカで12箇所のMVPが動いているのです。

 Sachsさんの滞在は短かったのですが、財務大臣、厚生労働大臣、同副大臣(武見さん)、緒方貞子JICA理事長、外務省高官等々にお会いいただきました。更に私の司会で、住友化学の米倉社長(カラム「ダボスから−3、2007/01/27」)との対談(日経新聞掲載予定)のほかに、いくつかのインタービューなど、大変喜んでもらった3日でした。関係者の皆さんのご支援に心から感謝します。また、ところどころでこれらの記事ご覧になれると思いますが、また報告します。写真はSachsさん、私のNPO同僚のジェームス近藤さんと、私です。

 これらの広報を通して、日本の国際貢献、特にアフリカでのすばらしい貢献を、国民の皆さんに、そしてSachsさんから世界に広めてもらおうというのが目的です。

 ところで、住友化学は「Bed Net(Olyset Nets)」という、いまマラリアにもっともinnovativeな蚊帳(カヤ)を、今は年間1000万つくってアフリカに提供している、世界的に大評判の会社なのです。MVPでも使われており、マラリアが激減し、子供たちの元気になり、生産性は向上し,教育も、食糧生産も増えているのです。さらに、生産工場はアフリカに2箇所、ヴェトナムと中国に各1箇所で、これらの国に雇用を提供し、従業員もこの製品のアフリカでの貢献に大変誇りを持って仕事をしているのです。これらもSachsさんとの対談で紹介します。楽しみにしていてください。


写真: 真ん中がSachs教授