ロンドンから、科学者の信頼



 Genevaからロンドンに入りました。目的はTony Blair 首相の科学顧問 Chief Science Advisor、私のcounterpartというべき立場(あちらは組織化されていますが、それでも最近、英国議会でさらに機能強化の提案も出ています:さらにBlairの今年の退任後はこの組織を統括するDTIーDepartment of Trade and Industry(**1)をDepartment of Energyとし、さらに Department of Scienceを作る(**1)ということも考えているようですーご本人はすばらしい化学者です)旧知のSir David King(http://www.dti.gov.uk/science/),(http://www.ch.cam.ac.uk/staff/dak.html)に会うことと、最近のGlobal Science and Innovation Forum最近のStern報告のSir Nicolas Stern(インド出張中)のスタッフと会うことです。来年2008年に日本が主催するG8 Summitの件もあるのです。野上大使のご一緒してくれました(写真 1)。とても有意義な時間でした。

(**1: グローバル時代に向けて英国の強いところをさらに強く、国家としてのメリハリをしていくという明確な政治的意思です。こんなこと日本で考えられますか?政治と役所の役割はしっかり確立しています。このグローバル対応へのスタンスは、対立する保守党もshadow cabinetの財務大臣 Osborne氏からの話(去年の夏、東京で話を聞きました)でも同じ意見です。ある英国人の意見ですが、英国が歴史上、世界に誇れるものは「科学、金融、民主主義」というのも理解できます。どうです?)

 King氏との話で一番印象に残ったことは、英国の科学への社会の信頼の高さと、それを保障する科学者コミュニテイが、個人レベルでも、総体としての個別分野、俯瞰性、哲学性、歴史性、国際性のレベルでも、科学的、社会的責任への意識や発言の質が高いということです。これはひとつは伝統であり、そのような社会的信頼が築かれてきた歴史と文化ともいえます。とにかく科学的根拠にもとずいた政策、提言を、という精神が政治でも、社会でもいつも強調されているということです。国家としても科学に基本をおいた政策の使い方が客観性が高いだけに国際的に信用度が高く、そのために戦略性が極めて高く、英国はその実力の2,3倍の存在感を世界に与えていると認識されています。今回のStern報告もそのような言葉を裏つける報告でする。だから信頼が世界からも大きいのですね。ブレア首相も「科学的事実にもとずいた意見」ということを繰り返し強調氏、それを戦略的に国際的な場でも使うのです。また首相は科学者の意見にはよく耳を傾けるそうです。科学者の高い見識と、一人ひとりの評価が仲間の中での開かれた相互評価を通して日常的に広く認識されています。これは本当に立派なことです。社会からの信頼の確立と維持が一番大事という哲学、認識です。

 Stern氏たちのスタッフとの会合もよかったです。外務省のJohn Ashoton (写真2:Special Representative for Climate Change)等と、その後はDepartment for Environmnt, Food, and Rural Affairs (http://defra.go.uk)でDavid Warrilow, Dr Stephen Cornelius, Ian Pickardと気候変動、エネルギー関系担当との会合でした(写真3)。

 Stern氏ご本人はこの後のDavos会議で会えたのですが、メールだけで、次回の会合となります。また5月にLondonの予定ですので。

 夜は野上大使公邸で、高岡公使(経済)、松浦一等書記官も参加し、さらに論議が弾みました(写真4)。

 ところで英国の外交官については細谷雄一さんの「大英帝国の外交官(2005年)がいいですよ。ここに書いてある外務省の建物(fco.gov.ukは Foreign and Commonwealth Affairsですが、これがどのような歴史的意味と位置付けをもつのか、これらを理解しながらこの本を読んでください)の中で写真をとったのですが、撮影禁止されているとのことでここに掲載できません。細谷さんはまだ若い(30代前半と思います)のに何冊も本を書いている学究の徒です。


写真1:David Kingのオフィスで野上大使と。


写真2:John Ashtonと英国外務省で。


写真3:Drs Warrilow, Pickerd とCorneliumn DEFRAで。


写真4:野上大使公邸で大使と。