第12回 「コンテンツって面白い!」の巻

 おかげさまで、このコラムも第12回を迎えることになりました。12というと、1ダースとか、1年12ヶ月とか、午前と午後が12時間ずつとか、身近なところに用いられている数字です。そうそう、十二支というものもありますね。先日、この十二支に加われなかった狸が、他の同じく十二支に加わっていない動物たちをそそのかして、十二支の動物たちを襲撃し、逆にこてんぱんにやられてしまうという物語を絵巻物にした十二類絵巻というものを初めて見ました。面白い発想ですねえ。確かに、あるグループが存在している場合、それに入ることができなかった動物(人間も含む)たちが、別のグループを形成して競争したり、あるいは当該グループを破壊しに行ったりすることが、動物(人間も含む)の世界では日常的に繰り広げられていることのように思われ、特に、人間の世界では、大きく言うと、そういうことの繰り返しが歴史を作っているようにも感じます。ちょっと、本題から違った方向に筆が行き始めました。本日は、このような人間界の歴史の考察、ということではなくて、コンテンツについてです。

 上記の「十二類絵巻」を見たのは、6月初旬まで開催されていた、京都国立博物館での大絵巻展においてです。博物館に入場するのに1時間待ちとか、目玉の展示品を見るのには2時間近い行列とか、これほど盛況な博物館の展覧会は初めて経験しましたが、それだけ待つ甲斐が十分にあるものでした。目玉の展示品は、源氏物語絵巻、鳥獣人物戯画、信貴山縁起の三点で、いずれも国宝です。この三点に、今回は展示されていませんでしたが、同じく国宝の伴大納言絵巻を合わせて、四大絵巻というのだそうです。この三点の中では、鳥獣人物戯画を見ることができたのが最も嬉しかったです。残念ながら、上記のような大行列なので、係員の方達の「立ち止まらずに、少しずつ前にお進み下さい。」とまるで隅田川の花火大会のように連呼している中で見なくてはいけませんでしたが、鳥獣人物戯画にあやかって、私も牛歩しながら、有名なウサギとカエルが相撲を取っているシーンなどを目に焼き付けるつもりで見ました。私の見たところ、どの絵巻物もすばらしく、全部が目玉と言っても良い素晴らしい展覧会でした。

 この絵巻物という様式は、日本独特のものなのだそうです。そして、この素晴らしい文化の蓄積の上に、現在、花を開いているのが、世界に冠たるマンガ文化かもしれません。私がこれまでで影響を受けたマンガとしては、中学生の時に、同級生の女の子が貸してくれた「ベルサイユのバラ」があります。このマンガのおかげで、フランス革命に興味を持ち、ひいては世界史を勉強したいと思うようになりました。社会人になってからだと、「ゴルゴ13」です。さまざまな国際問題を取り上げた骨太なストーリー展開には唸らされます。このマンガのおかげで、それまで知らなかった国際問題のことについて知り、それについてもっと勉強しようと思ったことが何度かありました。ここのところ、関西にどっぷり浸かっていて、暫く御無沙汰していますが、今回のテーマを次回に書いていたとしたら、このマンガの話から始めていたでしょう。全くの余談ですが、阪神との統合問題で話題になってきた阪急には、京都線と神戸線と宝塚線の結節点に十三という駅があり、炭酸水素ナトリウムと同じ読み方をします。

 阪急宝塚線の終点から僅かの距離のところに、日本のマンガの巨匠の記念館があります。宝塚市立の手塚治虫記念館がそれです。鉄腕アトム、ジャングル大帝、マグマ大使等々、幼少の頃は本当にお世話になりましたし、少し年が行ってから読んだ「ブラックジャック」や「きりひと讃歌」も面白かったです。けれども、私が知っているのは、手塚治虫氏の全作品のほんのごく一部に過ぎないということを、この記念館で認識させられました。生涯で、約15万枚の原稿、700タイトルにも及ぶ作品を生み出されたそうであり、かつて東大阪市にある司馬遼太郎記念館を訪れた時にも同様の感に打たれましたが、一人の人間が創造する力の圧倒的凄さに感動しました。

 ここで一瞬、絵巻物に戻ります。絵巻物には、同じ背景の繰り返しの中で、そこに登場してくる人物等が少しずつ違った姿で表される手法があるのですが、これを早いスピードでやって行くとどうなるか。ということで、今度はアニメーション、略してアニメの話を。数年前に宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」がアカデミー賞を獲得したことは記憶に新しいですが、ちょうどカナダ赴任中だった私は、ビデオを調達して、カナダ人や同僚の大使館員を自宅に招いて鑑賞会をしました。宮崎作品に共通の美しい映像や、日本人の郷愁を呼び起こすような(特に外国で見たので強く感じたのかも)作品でしたが、メッセージを読み取るのがちょっと難しいかなと言うのが率直な感想でしたので、よくぞこの作品を米国の映画芸術科学アカデミーが理解してくれたものだと思いました。カナダ人の皆さんも真剣に見てくれ、終わった後、面白かったと言っていました。いずれにせよ、日本のアニメの世界へのアピール力を実感できた素晴らしい出来事でした。

 一方、世界へとまではいかないものの、関西のローカルなキャラクターだったものが、そこそこの人気を持ち、全国放送のアニメになった例があります。その名は、「びんちょうタン」。前々回のコラムで登場した南高梅と同じ和歌山県みなべ町が発祥の地です。元々は、紀州備長炭をPRするためのキャラクターだったようなのですが、人気が出て、今年の春先に、金曜深夜の午前3時頃という異常な放映時間ではあったものの、TVアニメとして放送されました。さすがにライブで見る元気はありませんので、DVD録画して見ました。登場するキャラクターは可愛かった(当局の若手職員によると、「萌え系」キャラクターと呼ぶのだそうです)ですが、これまたメッセージを読み取るのが難しい作品でした。メッセージはともかくとして、癒されて下さいということだったのかなあ。

 アニメで世界一親しまれているものと言えば、多分、ディズニー作品だと思いますが、フロリダのディズニーワールドは、エンターテインメント系テーマパークとして世界一の面白さだと思います。私は、かつて米国留学中の冬休みに4泊5日の日程で行きましたが、それでも足りず、当初から予定していたキーウエストの先端までのドライブの後、また戻ってきて、更に2日滞在しました。そこに滞在している間中、全てを忘れて楽しませてくれる、素晴らしいテーマパークエリアです。でも一点だけ残念だったことがありました。このエリアの中にあるユニバーサルスタジオ(大阪にも進出しています)に行った時のこと。映画「ET」のテーマ館がありまして、最初にファーストネームを登録してから乗り物に乗って館内を巡った後、館を出るときに、「グッバイ、○○」と名前を言ってくれるサービスがありました。いよいよ我々夫婦の番。「グッバイ、チヅ。」と家内が呼ばれ、次は私。「グッバイ、」の後、アナウンサーのくぐもった呟きのようなものが微かに聞こえたと思ったら、「グッバイ、キャサリン」。ムネヒサって米国人には発音が難しいんだよなあ。そんな思い出もあるものの、本当に、コンテンツって面白い!