「異端を大事にしよう!産学官活動の甲子園!産学官連携サミットへのお誘い(2)」


●皆さん。

 今回は、前回のお約束どおり、第5回産官学連携会議のナビゲーターを勤めさせてもらいたいと思います。いつもですと、間際に原稿催促が出口編集長からあり、あわてて書くのですが、今回は催促なしの一回払い、新地の飲み屋の付けを払わなくても、出口編集長へはお支払いいたします。

 と出口さんに当て付けがましく?はじめましたが、実は経済産業省から大学発ベンチャーの調査がでたので(DNDにも載っていますので、見てください)、他の方が書く前にこのニュースで一回楽してやろうというスケベ心です(このニュースを送信する前に誰かが送ってきていないか?、ドキドキです)。

 既に、熱心なDND読者の方は、内容を出口さんのニュースでご存知かと思いますが、なんと1500社ものベンチャーが大学から誕生していました。しかも、数の水増しのために「大学前のラーメン屋や学生のアルバイトまで入っている」という世間からの冷たい批判?が正しくないことを示すため、コアベンチャーなる新用語も出てきて、質の面からも担保された数であることが示されています。

 第5回の会議の前に、こういうホットニュースがでてくるあたり、憎い演出です。京都の会議では、いよいよ質をどう向上させるかという第二フェーズでの重要な課題がクローズ・アップされそうです。

各分科会のテーマは、
(1)「国際的産学官連携の新展開」
(2)「地域・中小企業における産学官連携の新展開」
(3)「イノベーションの創出に向けた産学官連携の推進と人材の育成」
(4)「知的財産を軸とする産学官連携の新展開」
(5)「データから見る産学官連携の現状と課題」

 と今日的課題満載ですが、私は、3の)「イノベーションの創出に向けた産学官連携の推進と人材の育成」に出演します。このセッションでは、
T 世界レベルでの産学官連携活動を支援する人材の育成・確保
U 地域再生に資する産学官連携の推進に寄与する人材の育成・確保
V 産学官連携によるイノベーション創出に資する人材の育成・確保
という点に焦点を絞り、議論を深めていく予定です。

 結構細かい内容が既に決まっているの?と思った方、鋭い観察力です。今回は、文部科学省研究環境・産業連携課 佐野課長(古川先生のレポートの中で尾身幸次先生の発案で第一回会議が始まったという記載が出てきますが、佐野課長は尾身先生の秘書官をその頃されており、まさに時期を得た方が担当という印象です)の提案で、議論を深めるため、メール・ベースで、意見交換が既に進んでおります。

 お互いの主張や問題点は十分把握できましたので、その上で何をすべきか?何ができるか?といった踏み込んだ議論になるものと、今から腕まくりをして、期待しております。産学官連携会議は、サミットのようなもので決意表明が多く、具体案に乏しい(本当はそんなことは一度もなかったですが、得てして来られていない方ほどこういう批判を言われますので、念のため)と誤解されていた方、是非来てください。今回もそんなことはありません。内容で勝負です!是非、ご期待ください。

 会議の裏のキーポイントは、「異端」だと思います。出口さんの産学官連携会議の特集のBGMが、映画「ダ・ヴィンチ・コード」であるから、思いついただろうという冷ややかな目を感じますが(最も、私も山城さんの解説を読むまでは、BGMに気づきませんでした。出口編集長のBGMに採用した意味は?このあたりダ・ヴィンチ・コードのBGMを鼻ずさみながら、読んでください)、気にせず続けていきたいと思います。原作のダ・ヴィンチ・コードを読んでいない方も多いか?と思いますが、キリスト教で異端として葬り去られた分派に関する話(キリストとマグダラのマリアに子孫がいたとする一派です)で、いかに初期キリスト教から始まり中世に異端が消されていったかという話が、背景にあります。

 産学官連携も中世どころかついこの間まで(わずか10年です!)、大学では異端も異端、宗教裁判?の対象で、火あぶりものでした。バブル崩壊による危機感から、異端の人々が正統になり、今や産学官連携に携わるのはトレンドで、担う人材が足りないというのが、現在の状況です。しかし、産学官連携活動も、発展するにつれ、更に異端を生み出していくのは、歴史の必然でしょう。大学からベンチャーに身を投じる人もあれば、産から入りTLOや知財本部でアカデミア側に身をおき続ける人、あるいは、新しいビジネスモデルを思いつき、一見危なそうな?起業家に変身する人、など、これからも多くの支流・異端を生み出していくことが、考えられます。

 産学官連携活動も、5年以上になってくると、パターン化された考えも生み出されます。異端をはじき出すようにならないように気をつけるべきでしょう。それぞれの組織の異端児こそ、次の時代の主流かもしれません。日本経済の回復が見られるに従い、従来の重厚長大産業への回帰や大企業への依存という雰囲気も出始めているように感じます。第三期科学技術基本計画の最大のテーマであるイノベーションの創出の現場が、大学であり、ベンチャーであるということを忘れずに、異端を育てる産学官連携であって欲しいと思います(もちろん、ホリエモンのように犯罪に手を染めるのは論外です)。

 クールビズも始まりましたが、来週末には、京都で産学官連携活動の志士たちにお会いできるのを楽しみにしております。

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
知的財産戦略本部 本部員
アンジェスMG社取締役
森下竜一

 追伸:私どもの研究室とアンジェスMG社では産学協同研究を推進する研究者を募集しております。また、アンジェスは東京大学に先端臨床医学開発講座(寄付講座)を開設しております。こちらでは、遺伝子治療・再生医療やがんに対する新規治療法の開発を行います。東京・大阪のどちらでも大学院生や産学連携のポスドクを募集しております。ご興味のある方は、担当者の中神までご連絡ください(nakagami@cgt.med.osaka-u.ac.jp)。なお、私どもの研究室の詳細は、http://www.cgt.med.osaka-u.ac.jp/で見ることができますので、ご覧ください。
また、バイオサイトキャピタル社も、キャピタリストを募集しております(http://www.bs-capital.co.jp/)。大阪・東京でも勤務できますので、世の中の役に立つベンチャーを育てたい、あるいは、ベンチャーを経営してみたい方は、是非ご応募ください。担当者に直接(info@bs-capital.co.jp)ご連絡ください。