第17回 イノベーティブな社会の前提


 前回のコラムでは酔っ払いのSF社会のようなイノベーティブな社会像?を提案いたしました。黒川先生には、呆れられているのではないか?と危惧しております。

 実は、あの酔っ払い?の夢には大きな前提があります。イノベーション25の全体像は、実は私たちのいる委員会では議論対象でないので、良くわかりませんが、私自身は実は下記の点に関してある前提を置いた上で議論しています。

 この前提条件が一番大事であることは、既に日経BPの宮田さんをはじめとして多くの方が指摘されております。まず、最大の前提条件は、大きな政府か小さな政府かです。医療制度の変革は、小さな政府であることを前提にした議論であって、大きな政府が続くと前提すれば、医療制度の維持は可能です。

 ただし、どうやって、人口が1億人を切り、少子高齢化の中で大きな政府を維持する税金を稼いでくるかが、大変な疑問です。この解決策こそ、イノベーションかもしれません???。従って、私はありえないという立場ですが、秘策があれば大きな政府の立場を取ることも可能です。

 秘策とは何か?実は、これは第二の前提に関わります。大きな政府が維持できないという前提は少子高齢化が原因ですから、少子高齢化でなくなれば、大きな政府はありえます。

 では、少子高齢化が解消できるか?生めよ、増やせよ(戦前みたいですね)、で、出生率が上がるかもしれませんなんて、いいません(最も3人目から税金をタダにすれば、可能かもしれませんね)。

 どうするのか?移民の受け入れです。アメリカのように移民社会に本格的に移行すれば、少子高齢化を気にする必要はありません。出生率が低下しているのは、日本人だけで、アジア全体では爆発的に増えています。問題は、移民受け入れによる日本合衆国?が可能かどうか、いえいえ、我々がうけいれうるかどうかです。50%が移民であれば、人口1億5000万ぐらいは可能でしょうから、十分大きな政府の維持は可能です。我々、クラシカル日本人は受け入れることは可能でしょうか?

 私には、この答えは正直わかりません。個人的には大丈夫なような気もしますが、フィリピンからの看護士受け入れ問題などを考えると自信はありません(現在のような一部職種の限定的な出稼ぎなどという姑息なアイデアでは、現行医療制度の維持は無理ですし、そのような都合の良いアイデアが2025年にも受け入れられるという幻想は捨てるべきです!受け入れるか?死すべきか?せークスピアのようですが、それ程大きな問題だと認識すべきです)。私の将来像は、一応受け入れは限定的である(10%以内)という前提で立てています。もし、アメリカ型日本合衆国?に移行するのであれば、全く別の2025年が生み出されます。個人的には、日本人は人口が減少して、世界の中で滅びる民族になるのを選ぶのではないかという危惧を持っています(日本沈没では、この過激な意見が?出てきますが、私は結構共感してしまいますので、多分この前提を考えてしまうのだと思います)。

 イノベーション25は日本人観、あるいは、日本の将来選択も視野に入れないとできない恐ろしく奥の深い議論かもしれません??黒川先生の、大相撲ゼーションも同じ覚悟を迫っているような気もします。なぜか、今回は暗め?のイノベーション感でした。

 皆さん、どう考えられますか?

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授
知的財産戦略本部 本部員
アンジェスMG社取締役
森下竜一