<BACK>

第42回「中国の躍進は本物か、日本は何をすべきか?」(番外編)



 今年のオリンピックは、開催国の中国が相当のメダルを取ることは早くから予想されていたが、金メダルがアメリカの倍近くまでになると予想した人はちょっといないだろう。

 アテネオリンピックの時は各国のメダル獲得数(カッコ内は金メダル)は、表1に示される通りで1位アメリカ102 (36); 2位ロシア92 (32)が圧倒的に強く、以下に大きく離れて3位中国63 (32); 4位オーストラリア49 (17); 5位ドイツ49 (13); 6位日本37 (16); 7位フランス33 (11); 8位イタリア32 (10); 9位イギリスと韓国が共に30 (9)がベスト10だった。日本は6位につけていたから大したものである。

 しかし、今回の北京オリンピックでは、中国とイギリスが躍進し、1位アメリカ 110 (36); 2位中国100 (51); 3位ロシア72 (23)の3ヶ国が断然リードし、以下に4位イギリス(!)47 (19); 5位オーストラリア46 (14); 6位ドイツ41 (16); 7位フランス40 (7); 8位韓国31 (13); 9位イタリア28 (8); 10位ウクライナ27 (7)となり、日本は、11位25 (9)という惨憺たる成績である。

 その上に、中国はパラリンピックでは211(89)を獲得し、これは2位のイギリス102 (42)、3位アメリカ99 (36)の倍以上である!

 中国の金メダルの多さには、とにかく驚かされるが、これは卓球、体操、飛び込み等の特定の得意競技で荒稼ぎをしているからである。オリンピック本来の種目といえる陸上は、さすがにまだまだで、そのせいか、100障害の母国のスーパースターがケガで棄権した時の中国の落胆は異常なほどだった。これは勝てる競技に集中するという中国政府の戦略の賜物だろう。

 また、イギリスが大幅にメダルを増加させ、パラリンピックに力を入れていることはあまり知られていないようである。

 結局、表1のベスト20の国の中では、メダルを大幅に増加させた主な国は中国とイギリスで(韓国は金メダルの数は増加しているが)、逆に減少させたのはロシアと日本である。中国が伸びたのは、人口が圧倒的に多い上に、独裁国家であらゆる犠牲を払ってもオリンピックに圧倒的な時間と財源をかけられるからであることは疑いもない。

表1: アテネ・北京オリンピック・パラリンピック結果


 オリンピック後の次の目標は、月に中国人宇宙飛行士を送ることや、なりふり構わない経済発展だろう。月に人を送ることは、莫大な経費がかかる割には見返りが少なく、アメリカでさえも反省して当面行なわず、宇宙大国ロシアも計画がないほどである(ロシアがやはり宇宙大国だなと思ったのは、日本人宇宙飛行士 星出彰彦さんがワシントンDCで講演した時に、宇宙飛行士に応募して大変だったことはロシア語を覚えなければならないことだった、と語ったことだった)。ところが、経済貧国の中国が月に人を送ることを公言していることは、対外的に威信を見せ付けさせたいことと、国内的には不満分子を押さえるためなのだろう。

 とにかく中国は必死で世界のリーダーになろうとしているようだが、本来のリーダーになるために基本となる経済・社会の環境を世界的水準に整備しなければならないが、13億という教育水準がバラバラの人口を抱えて途方もなく時間がかかるので、インスタント効果があるものを狙っている様子である。

 しかし、そのために一般人民の生活にしわ寄せがきて、過酷になるのは当然なようで、言論とジャーナリズムには徹底的な取り締まりがあるにもかかわらず、背後から人民の悲惨な生活、政府の横暴のニュースが漏れ伝えられる。多くの食品に毒性物質が用いられていることも、インスタント経済達成のあがきなのだろう。

 しかし、こうした情勢は昔の東独、ソ連、そして戦前の日本に類似しているともいえるので、歴史はやはり繰り返すのかもしれない。都合の悪い情報はひた隠しに隠し、今までも人間をマウスのように実験動物として使っているのに等しいのではないかという気がする。

 中国の表向きの躍進の裏には実に暗い影がありそうだ。競技者の年齢の問題もその1つである。

 オリンピックの体操に参加するためには16歳以上でなければならない規定がある。ところが、中国の体操選手には本当に16歳になっているかわからない選手が結構いるようだ。中国のジャーナリズムでさえそれを報じた位だ(勿論、中国関係者は否定したが)。

 選手の年齢は、パスポートで判断するとオリンピック委員会は決めている。しかし、そのパスポートは中国政府が発行するものである。中国政府が社会の表裏で、取引の全てをコントロールしていることは公然たる事実である。パスポートの年齢は、生年月日を印刷するだけで決まるから政府がコントロールすることは極簡単なことである。

 このオリンピック大会では、チベットの開放や台湾問題のことをちょっとキャンペーンするだけでも国外退去になっていたほど、中国政府のコントロールは強い。

 その上、開会式の花火、子供の歌の吹き替え、56人の各種民族の子供のショーは実は衣装だけで、実際の子供はほとんど全て漢民族というように、虚偽で固めたショーであるという批判が世界から出た。

 トリノの冬季オリンピックの開会式でも、パヴァロッティの歌は実は「口パク」で本人は歌っていなかったらしいが、中国の偽装は本人自身の「口パク」というレベルのものではない。

 選手の年齢についてアメリカ代表団は、「それはオリンピック委員会が決める問題で、我々が口を出す問題ではない」と一応平静を装っているものの、ロンドン大会では中国がアメリカを抜くことが確実視されているので、アメリカは当然として欧州勢も「オリンピック委員会だけの問題」とは言ってられないだろう。

 欧米国はそれだけオリンピックやワールドカップを支配してきている。水泳の泳法にしても、日本選手が新しい泳法で世界記録を出し、勝ち続けると、「泳法違反」として禁止し、スキーのジャンプでも同じ様に規制してきたのが欧米である。世界100ヶ国を超えるオリンピックといってもやはり欧米がコントロールしているのである。

 その意味で欧米主導のルール作りは、何とかしなければならないが、それでもそれは公開の場で決定されており、中国の裏社会で国家的作為は、もしそれが事実であればそれどころの問題ではない。

 しかし、中国は、これらの全ての問題を「枝葉未節の問題」の一言で片付けてしまう厚顔無恥さがある。もし、これが日本の行為なら世界中のジャーナリズムどころか、ありとあらゆる分野から一気に叩かれるだけでなく、日本中が右往左往し、内部告発が続発し、総理大臣も辞任するのではないか。

 ところが、相手が中国であるとアメリカも欧州も遠慮しているのか、「オリンピック委員会の問題…」という発言しか出ないのは腑に落ちないところである。

 しかし、このような国家統制の政策・運用が破綻するのは、ヒットラー時代のドイツ、戦後の東ドイツ、ソ連が物語っている。しかも中国は漢民族を中心とする他民族、他国家の集まりである。内紛が生じるのは時間の問題ともいえる。であるからこそ、中国はチベット、台湾、ウイグル等の問題を「国内問題」と称して外国からの一切の干渉を許さないのであろう。

 オリンピックの成功(少なくとも中国国内では成功面しかプロパガンダに使っていないだろうが)で、この統制政策が生き延びるのか、結局は破綻になるのかは、これからの歴史を待たなければならない。

 まあそれはともかく、メダルの獲得ではとにかく人口が多い国の方が有利であることは当然である。ベスト16の国の中では中国が13.3億人、アメリカが3億人、ロシアが1.4億人もいるので、メダル数もベスト3を占めている。 しかし、次に人口が多い日本(1.3億人)が11番目と低いのはやはり惨状としかいえないだろう。

 いずれにせよ、メダル数を人口で割ってみると面白い結果が出る。

 それによるとワーストは何と中国、ブラジルで、共に8個/億人、そして日本20となり、次にこれも何とアメリカの36であり、ベスト20のうちワースト4がこれらの国になる!

 人口の割にメダルを多く取っている国は、ジャマイカ367、オーストラリア219、キューバ218、ベラルーシ190が圧倒的によく、続いてオランダ94、カザフスタン87イギリス77、韓国65、フランス63、ウクライナ59という国々である。

 アメリカやヨーロッパのほとんどの国々では二重国籍を認めているが、そのために頭脳流出が制限され、黒人や中南米人を積極的に移住させることが可能で、これによってスポーツ人口の底辺を高めていることは紛れもない事実である。

 図1は、日本の人口は現在の1.3億人から50年後の2055年には9000万人と30%も減少し、しかも20〜40歳位の若・中年層は半減するというレポートである。こうなっては日本はオリンピックどころか国の経済さえ支えられるかどうかの危険がある。

 人口構造が将来深刻な状態になることが予想される日本もアメリカ、カナダ、オーストラリア、イスラエルそしてイギリス、フランス、スペイン、イタリアを含む多くのヨーロッパ国のように二重国籍を認めることを考えるべきではないだろうか。

図1: 50年後の日本人口−現在と2050年の年齢構成の比較−