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第19回 日韓問題と日本の将来を考える




 以前にもレポートしたようにアメリカは抜本的な新特許制度を検討中であるが、この法案の施行には日本と欧州特許庁がアメリカが提案するグレース期間(出願前の1年以内なら発明を先に発表しても特許出願の先行技術にならないという例外規定)を了承することが条件になっている。
 つまり、アメリカは日本と欧州のみを抱き入れた新しい特許制度を検討中なのだ。これはそれほど日本の特許や新技術開発がアメリカにとって重要であることを意味している。
 このようにアメリカから評価されることは素晴らしいことではあるが、果たして日本はそれほどの一流国になっているのだろうか。
 最近の北朝鮮の拉致問題がほとんど何も進展していないことや、中国での反日運動を見ると、むしろ足元が危ういという感じがするのは筆者だけではないだろう。
 こういうことを考えながら、私はアメリカに21年前に移住して初めて暮れから正月を日本で過ごした。実に21年振りの年末年始である。
 主な理由はたまたま私の甥が12月24日に結婚式を挙げたためであるが、日本の最も象徴的な時期に日本を内部からみたり、アメリカを外からみた場合どのように感じられるのか確認してみたいという気持ちがあったのでそのまま正月過ぎまで日本にいることにした。

 つまりそういう意味では私も半分日本人、半分アメリカ人になっているのかもしれない。出発は12月19日。年末年始は日本企業は休みになるから仕事は12月20日から28日の間に数回ミーティングがあっただけだった。それに家族一緒なのでなるべく家族の事を優先しなければならない(これも半分アメリカ人になったためといえるのだろうか)。そのため日本のクライアントには日本に滞在していることをあまり伝えないでおいた。

 こういう旅行では機内やホテル、列車内で仕事以外の本を読む時間もある。そこでアメリカではまず購入できない関心の高い本を買って読んだ。
 年末年始という時期なだけにどうしても日本という国のアイデンティティーや将来どうなって行くかということが気になる。

 その中でもいやが応でも関心が最も高くならざるを得ないことは、北朝鮮の拉致や中国における反日デモという不穏な動きがある中で、日本が常任理事国になることを韓国と中国が徹底して反対することが明らかになったことから、一体これらのアジア諸国は何を考えているのか、そして日本は今後どのように対応すべきかということである。
 韓国や中国が日本を嫌悪しているのは日本人なら誰でも知っているだろう。ただどの程度なのかという具体的なことになるとほとんどの日本人は知らない。私も知らない。それほど日本人はアジアの問題に関心が少ないのだ。だから彼らは余計に頭にくる。

 ここ数年の韓流ブームで、韓国文化への関心があっという間に高まったり、そのこと自体は大変良いことだとは思うが、我々日本人は韓国の本心を全く知らずに、単に皮相的な面だけみて喜んでいて良いのだろうかと考えざるを得なくなる。
 特に半年位前に金完燮氏の「親日派のための弁明」を読んだ時に我々日本人はあまりに日韓の歴史を知らないと愕然としたものである。これは韓国は歴史を歪めて日本を非難しているが、そういうことでは韓国は一人前の国になれないという韓国人に警告した本である。

 そこで今回は類似の本である金文学氏の「反日という甘えを断て」という本を買って読んでみた。
 そこには韓国では想像を絶する本がベストセラーになっていることを紹介していた。以下の抜粋は私の創作ではなく、金文学氏の本の抜粋であることを断っておく。

「皇太子妃拉致事件」(2001年のベストセラー)
 ……200×年のある日、歌舞伎座に芝居見物に行かれた皇太子妃雅子様(注:実名で出ているらしい)が、突然何者かに拉致されるという前代未聞の事件が発生した。当然のように日本中が大騒ぎとなり、日本政府は皇太子妃を拉致した犯人を早急に捕まえようと躍起となった。

 犯人は韓国人留学生の金イヌともう1人の共犯者で、取引条件として戦前日本軍がこと皇后を殺害した事件の真相を記した秘密文書「電文435号」を公開するよう日本政府に要求した。その間、奈良のある山村に監禁された皇太子妃雅子様は、犯人から日韓の歴史教育を受け、日本の残虐な朝鮮支配の歴史を初めて知った。

 皇太子妃雅子様はその後最後に解放されたが、その時韓国に戻る犯人に向けて次のような手紙を託した。
「歴史に目を開かせていただいた二人の方に深く感謝すると同時に、一人の日本人として、あなたたちの国に謝罪の心を伝えます」……

「ムクゲノ花ガ咲キマシタ」(1994年のベストセラー)
 ……ノーベル賞の候補にも挙げられた在米韓国人の科学者が、韓国で核兵器開発に関与したため、アメリカで暗殺された。ある勇敢な韓国人の記者がその事件を追及し、隠匿されていたプルトニウムを発見して大統領に報告した。

 それをもとに韓国と北朝鮮が共同で核兵器を開発し、これを成功させた。その頃、日本はシベリアの資源開発をめぐり、韓国に先手をとられたことから韓国侵略戦争を策動した。そして金丸・小沢・橋本などの政治家 (注:これらの者も実名で出ているらしい) は、竹島の領有権を口実に一方的に韓国に戦争を仕掛けてきた。
 それに対して韓国大統領は北の金日成主席と連合し、核ミサイルで威嚇したことで橋本首相は戦争を断念し、韓国に赦免を嘆願した。こうして日本の韓国侵略は阻止されたのであった。……

「ウイルス」(1990年ベストセラー)
 ……200×年、富士山が爆発して、日本が混乱に陥った。その混乱に乗じて自衛隊が軍事クーデターを起こし政権を掌握するや、細菌兵器によって韓国で無差別テロを敢行した。すでに南北統一を果たしていた韓国は、旧満州の地域を中国から買いとり、国連常任理事国になっており、日本の残虐な作戦を韓国情報部員が事前に解読して阻止した結果、日本はおとなしく玄界灘の油田の開発権を韓国に譲渡して戦争は中止された。……

 以上のように今日の日本からはあまりにもあり得ないと思われる仮想状況を設定し、日本を叩きのめして描いている本が韓国ではいつもベストセラーになるのである。
 もう一度断っておくが、この抜粋は私が書いているのではない。韓国人の金文学氏という作家自身が、韓国ではこういう荒唐無稽なバカバカしい本ばかりはやって、反日反日とばかりいっているのは結局韓国の島国根性(韓国は島国ではないが…)のためで、これでは韓国は一人前の国になれない、という韓国人に自己反省を求めて書いている本に記載されていることである。

 しかし、こういう驚くべき本は韓国における反日運動のほんの一部でしかないと金文学氏は更に書いている。
 戦前の日本軍の統括時代はほとんどの韓国人は日本軍に協力していたと思われるが、戦後そうした親日派達は草の根を分けても探し出され、リストに載せて公表され財産は没収され、社会的にも抹消されてきた。こうした親日派狩りは今でもあり、わずか4年前のサッカーW杯の2002年の時にも、韓国若手国会議員が708人の親日派リストを発表し、その6ヵ月後にも民族文学作家会議が42人の親日派文化人のリストを発表し糾弾していると記載している。

 こうした韓国での反日運動、キャンペーンはあらゆる分野であらゆる手段で行われていると説明しているが、ここではとても全て紹介するスペースはないし、またそれが本稿の目的ではないので省略したい。
 さて、こういうことを知って我々日本人は何を考えなければいけないのだろうか。

1. まず第一に我々日本人は韓国が日本や日本人をどのように評価し、記載しているかをまるで知らないことである(少なくとも私は金完燮、金文学氏の本を読むまではまるで知らなかった)。これでは今後韓国とどのように付き合い、対応してよいかわかるはずもない。

2. 韓国で日本が以上のように描かれているとすると、北朝鮮や中国でもそれと同じか、あるいはそれ以上残虐で醜く描かれているであろうということは容易に推察される。であるからこそ北朝鮮は平然と拉致を行い、中国では反日の暴動が起こるのだろう。

3. 日本は先進国における日本の評価、批判には敏感であり、あらゆる情報を集めるが、アジア諸国におけるこの種の情報はほとんどといってよいほど無視しているか、集めていないのではないか。日本はこれまでアメリカや欧州に追随していけば道が開かれると考えてきたが、ここでもう一度考え直す必要があるのではないか。そうしないと中国や韓国や北朝鮮はあらゆる面で日本に反対し、日本が国連で常任理事国になることも阻止するだけでなく、機会があれば日本に戦争を仕掛けてくるかもしれない(勿論、彼らの政府はそうした馬鹿げたことは考えていないにしても、反日教育を受けた若者の暴走を止められるのだろうか)。

4. 日本はこうした国々で行き過ぎた、そして明らかに誤っているといえる反日運動に手をこまねいて傍観していてよいのだろうか。多くの日本人の著名人が本名で出てくる悪意の小説や物語について何とかするべきではないのか。少なくとも、もし日本が韓国や中国について同様の小説を書いたりしたら彼らの国でどのような暴動が起こるかは容易に考えられる。

5. 金完燮も金文学氏も韓国にいた時には反日的考え方は当然と考えていたと記載しているが、外国に留学して外国人が書いた日韓や、アジアの歴史書を読んで始めて韓国における歴史書に問題があると気が付いたそうだ。韓国における歴史書には日本を恐るべき国、残虐な国としか記載がないという。しかし、他の国(特に先進国)ではそのような一方的記載はなくもっと中立的であるそうだ。つまりこういう第三者的先進国の協力を得る必要があるだろう。

6. それでも金文学氏の本には韓国人のほとんどは昼は反日的だが夜になると親日的になると記載している。これは過去の日本を嫌悪するものの、日本の製品や技術は韓国にとって絶対的に必要であるし、日本の文化自体も好きである者は非常に多いという。そして多くの反日韓国人も日本に来て日本の現在の本当の実情を知ると親日的になって帰国するという。逆にいうと韓国の中で反日教育ばかり受けていると本当の歴史、真実は絶対理解できないのだろう。勿論これは北朝鮮にも中国にも同じことがいえるのだろう。

 以上のことを考えると今後日本が取るべき道も明らかなのではないか。日本にとって最も重要なのはアメリカや欧州であることは間違いないが、所詮は日本はアジアの1つの国であり、アジアからのサポートは絶対に必要なことを考えるとアジア諸国での日本についての著作物についてとにかくもっと関心を持つべきであろう。戦後50年以上これを放置していたことを考えると、これを変えていくには20年も30年もかかるかもしれない。そして日本は我々が昔アジア諸国で行った歴史についてももっと知る必要もある。
 こうした地道な努力がない限り日本はアジアでのサポートが得られないし本当の一流国にも常任理事国にもなれないだろう。

 また、アメリカへの一方的追随外交も諸外国に笑われるだけになるので改める必要がある。と、こうして本稿を書いているうちに、米国輸入の牛肉に大問題があることが判明し、即刻全面輸入禁止になったというニュースが流れてきた。アメリカのあまりにずさんで日本を舐めた検査システムを考えるとこうした毅然たる姿勢は日本のイメージを上げる上でも好ましいだろう。

 何はともあれ、我々日本人は、韓国で暗殺される恐れを振り切って、勇気を奮って書いた金完燮氏の「親日派のための弁明」や金文学氏の「韓国民に告ぐ!」、「反日という甘えを断て」という書物を一読し、日本のあり方を真剣に考える必要があろう。
 そうでなければ日本がいくら特許や知的財産でアメリカ、欧州に肩を並べたといっても本当の一流国にはなれない。