第7回 最近の産学官連携助成金



 JSTが行った、重点地域研究開発推進事業「シーズ育成試験」これはヒットです。平成17年7月15日〜8月31日という募集期間で支援規模は200万円上限、全国で500課題程度。コーディネータが発掘した大学の研究シーズを実用化にむけて育成する。試験研究費として研究者が使えます。設備、備品:材料、消耗品、:アルバイト雇用の労務費:旅費交通費など大学の研究室において小規模なものにはもってこいです。応募書類も従来に比べればかなり簡素なものでOKです。

 特許は出したものの、実用化のためには実験、試験が必要になります。産学連携が声高に叫ばれていますが、まだまだ、いままで一度もやったことがない研究者のほうが多いと思います。自分で自分に奨学寄附金を出している研究者もかなりいます。残念なことに採択されると研究者と所属大学にだけ支払われ、コーディネータには何もありません。所属TLOにも何もありません。

 大学は1件につき200万円の上限30%、間接費として60万円が得られます。かなりの研究者、今まで応募経験のない研究者もこぞって応募したようです。当初JSTも時期、金額などで応募者数を心配したようですが、締め切ってみると約7〜8倍になったようです。

 金額面から見るとマッチングファンドの中小企業向けF/S(フィージビリティスタディ)がこれに近いと思われます。しかしF/Sは調査のみで実際の実験費用は出ません。管理法人のTLOには管理費、労務費が入ります。大学の研究成果を実用化、事業化するにはどうしても研究者だけではなくて、コーディネータなり企業家も交えて実験作業が必要です。

 規模によってはそれほどの金額ではなくても十分に効果がある場合もあります。国家イノベーションシステムによる大規模なホームラン成果を期待するものと、とにかく実用化を先ずは目指すというヒットを狙ってもよいのではないでしょうか。
また、助成金の常連の方々ではない研究者に少しでも研究費が外部から来ることは、自信にもなります。

 大学にとっても約30%の間接経費は大きいです。大学の研究成果は企業にとっては不確かなところが多いです。産学官連携の効果を実際的なものにするには大学発特許即事業化ではなくて、その種を企業家も加わって育て上げる努力が必要です。実用化されうる研究成果を見つけ、一緒に育て上げる努力が出来る企業を見出すのはコーディネータの仕事でしょう。

 このようにコーディネータの努力次第で産学官連携の効果が現れるのですから、所属法人には間接経費を支払ってもよいと思います。出来れば今年度中にも200万円のものを、1,000件ほど用意していただければと思います。尚マッチングファンドのF/Sについても調査だけではなくて、実験等の費用を含めていただければ研究者にとっても企業家にとっても次のR&Dに進みやすいと考えます。いかがでしょうか。