第4回 中国の産学官+金 〜シンセンハイテク団地〜



 2005年4月にシンセンハイテク団地内の北京大、清華大科技園の分園を2時間ほど垣間見ました。シンセン清華大研究院と北京大学、香港科技大学およびシンセン市が作った機関、深港産学研基地です。そのときにコラボ産学官を紹介しました。すると、深港産学研基地の副主任が虚擬大学に案内してくれました。中国内および外国(フランスのリヨン大)の43大学が入居しているところでした。

 あれ、中国のコラボ産学官だ!ここでも産学官金って言ってる!ということで、5月末に再度訪問してきました。以下はシンセンハイテク団地の紹介文です、原文に出来るだけ忠実にして、要約しました。

 1996年9月から建設スタートしたシンセンハイテク団地はシンセン経済特区の西にあり、建設予定面積11.5Km2で中国が重点地区と指定した、5大科学技術団地のひとつです。2004年度同団地工業総生産額:約1,100億元、輸出額:79.2億USドル、税収:45.7億元。同団地は産業生態、人文生態、環境生態の「三態合一」の総合環境の中にあります。

●六大特色

1.自主的知的所有権を持つハイテク製品
 ハイテク団地にある企業が研究開発に成功した遺伝子抗癌薬、SARSおよび鳥インフルエンザの検出試薬は国際的水準に達しています。コンピュータや通信、ソフトウエア、光学製品、ディジタルテレビ、および医薬品、医療器具(SARSの時には遠隔体温計が活躍した・・清華大科技園内の企業)これらは同団地の主要な産業となっています。

2.絶え間なく完全なのものにしつつあるハイテク産業チエーン産業別に見ると
1)通信産業:移動通信、光ファイバー端末、ネットワーク機器
2)コンピュータ産業:部品およびハードウエアセット
3)ソフトウエア産業:集積回路設計、組み込みソフトウエアからシステム設計
4)医薬産業:検出試薬、遺伝子ワクチン、遺伝子薬品、医療器具
があります。

3.政府・企業・研究機関・金融機関・仲介機構を結び付けた区域ベンチャー体制
 ハイテク団地は市場をガイド、産業化を目的、企業を主体、人材を中心、公共研究開発体制をプラットフォームとして、周辺へ拡大しています。そして、国内外、政府、企業、大学、研究機関、金融機関、仲介機構を連携した体制を確立しています。(産学官+金+コーディネータ!!!)(弁護士がコーディネータの場合がある)
 ここには企業の研究開発センターが20箇所、技術センターが9箇所、重点実験室が22箇所および企業に設けられた博士号取得後の研修所が13箇所あります。団地内企業の特許出願数は2004年3月までに4,702件に達しています。

4.多元化、専門化、インタラクティブなインキュベーション群
 政府によって設立されたシンセンソフトウェアパーク、国家IC開発シンセン産業化基地、シンセン国家電子工業テストセンター、バイオテクノロジー・インキュベーター、清華大学、北京大学、ハルピン工業大学、シンセンバーチャル大学パークによって設立された大学インキュベーター、そして、政府と留学生協会が共同で設立した留学生創業パークから構成されたインキュベーター群が形成しつつあります。
 現在孵化中の企業は約500社ある。政府、国内外、民間資本が参入した創業投資システムは企業の孵化のためにベンチャー投資の面で、強力なてこ入れをしています。(インキュベーション:孵化器)

5.ハイテク団地に有名校が集結
 シンセンに有名校があり、その集まりはハイテク団地です。43校の国内外有名大学から構成されたシンセンバーチャル大学パーク(虚擬大学)は、6年の建設の結果、ハイレベルの人材の養成、大学研究成果の(産業への)移転及び産業化の基地を成しました。(虚擬大学内の一校当たりの場所:45m2,常駐者あり)
 シンセンから養成された修士以上大学院生の人数は約1万3千人に達し、「広東省科学技術人材基地」として認められました。シンセンで252社が設立され、217件の成果が産業化されました。(年一回の起業家コンペあり・・上場を目指す)
 各大学の78箇所の国家レベルの重点実験室及び技術センターから構成された「シンセンバーチャル大学パーク実験室プラントフォーム」はスタートしました。なお、国家科学技術省、教育部(文部省)の許可を得た「シンセンバーチャル大学パーク国家大学技術パーク」は建設中であり、バーチャル大学パークは大学の有効な人材と有効な技術を利用し、整備された環境で、効率よく貢献しています。

6.世界を目指す科学技術団地
 国際科学パーク協会の機関メンバー及びアジア太平洋経済協力科学技術パークとして、シンセンハイテク団地はアメリカ、イタリア、日本、韓国、エジプト、オーストラリアなど十数カ国の政府機関、科学研究機関及び大手企業と長期の安定化した、連携関係を確立しました。市政府はハイテク団地で「シンセン国際科学技術ビジネスプラットフォーム」を設立し、多国籍企業の在深投資、機構の設立のために架け橋をし、国外の科学技術ビジネス機構及び技術移転機構にサービスを提供しています。団地内の企業は積極的に国際市場を開拓すると同時に、自社の研究開発センターを海外に設立し、我々の技術の進歩を国際技術発展の大きなプラットフォームに溶け込ませます。
 新世紀を目指し、新しいチャレンジに応じるため、市委員会、市政府はハイテク団地を中心とするハイテク産業区域を企画、建設する戦略を決めました。このことは、産業領域の拡大、産業チェーンの整備、産業構造の最適化、「調和のとれているシンセン、高効果、高利益のシンセン」の建設のために確実な保障を提供しました。

<あとがき>
 このほかに清華大はシンセン清華実験校をもち、小中高生5,000人、海外から300人が在籍しています。このように躍進と拡大のシンセンですが変化もまた激しいようです。
 改革開放の先駆けとしてシンセンが選ばれた頃は経済活動および海外との交流の場所は中国内では限られていました。当然各大学が分園を作るところはシンセンしか許可されていませんでした。そのために多くの大学が虚擬大学へ入居したようです。(費用は国が出した)
 最近、清華大、北京大は上海をはじめ分園を作ることが出来るようになったために、他大学も分園つくりに注力しているようです。虚擬大学内ではシンセン事務所としての役割は果たしているようですが、TLO的業務は行ってはいないようです。今後の展開を模索中と見ました。シンセン清華大学研究院は虚擬大学から外に出た例のようです。商品化、販売の研究に重点が置かれている、実践的な組織です。
 もうひとつの深港産学研基地は三箇所(北京大(主任)、香港科技大(副主任)、シンセン市(副主任))の合弁とのことで、協力関係にはあるがそれぞれの独立性は高いようです。中国は変化が激しいので目が離せません。
 次回も中国です