第3回 中国の産学官(1)



 今年になって中国を訪問する多くの機会を得ました。小生が専務理事を務めている、「コラボ産学官」(http://www.collabosgk.com/)へ中国大学科技園協会が入居する意思ありとの情報を得て、3月に北京大関連会社の紹介で、北京大学を訪問しました。

 宿泊は大学内のホテルでした、日本からの留学生も多く見かけました。先ずは北京市の広大な中関村には驚きました。つくばのイメージがありましたが、これはまったく違う、ビジネス&サイエンスパークと感じました。インキュベーション施設や海外からの企業誘致も盛んです。これから北京市には株式市場が開かれます。それは中関村の西地区です。中関村の中には多くの大学とそばには必ず科技園があります。

 科技園については事前に『産学連携』、経済産業研究所原山優子氏[編著]、2003年東洋経済新報社発行、第3章角南篤氏「中国の大学企業と産学」に詳しく紹介されているものを読みました。現在では国家級と認定されている大学科技園は44箇所です。大学科技園協会を組織しています。その世話役代表に清華大科技園、副を北京大科技園があたっています。双方の代表者にお会いしました。

 日本における産学官連携の様子、特にTLOの活動状況およびコラボ産学官の活動状況を詳しく紹介いたしました。TLOについては米国からの情報を得ていました。知的財産に関すること、技術移転の実際活動等種々質問がありました。中国内において大学教員が大学発企業に専念しすぎる場合があり、また会社経営について大学へも影響が出ているなど問題点もお聞きしました。技術移転に関してもまだ十分ではないとのことです。

 分野別では、バイオ、IT、ソフトウエア関連については、帰国した海外留学生の活躍や各大学研究者の成果が多く出ており、インキュベーション施設には多くの大学発ベンチャーが入居しています。しかしながら「ものづくり」においてはまだまだと感じている様子です。「ものづくり」については日本の中小企業から多くを学びたいと思っているようでした。日本の中小企業の実力はかなり評価していました。

 コラボ産学官への入居を前提とした覚書を取り交わしました。その後5月12日「コラボ産学官一周年記念式典」へ参加したい、入居したい旨連絡が4月半ばに入りました。中国国家大学科技園協会国際TLO部で入居ということになりました。5月12日には中国全土から約30名が来日したいとの連絡があり、リストをみると24大学科技園のメンバーです。これには驚きました。

 しかし、そのときには各地で反日デモが行われていました。上海日本領事館に対するデモ行為が特にひどかったのは記憶に新しいことです(中国大学人の多くは学生たちにデモに参加しないように指導したそうです)。そのために南方の大学科技園メンバーへのビザ発行が困難となり、最終的には、清華大科技園劉氏を団長に清華大、北京大をはじめとする18大学20名が来日しました。

 そして、「コラボ産学官一周年記念式典」と中国大学科技園が入居の報道はNHKニュースで全国に流されました。18校の中にはすでに日本の大学と交流、提携をしている大学があります。しかし、産学連携についてはこれからで、2,3の大学との可能性がすぐにあることがわかりました。以下に中国からの大学科技園についての情報を紹介いたします。

中国大学科技園
1978年に始まる「改革開放」政策から、1985年に国務院は「科技工業区」による開発課題を設定した。その際に大学は大学科技園という概念を導入し大学発ベンチャー企業創出をはかった。しかし実質的な進展は少なく、模索状態が続いた。1999年、国家科技部(省)と教育部(省)の推進により、大学における研究成果の民間への技術移転だけでなく、不動産開発や、周辺インフラ設備を含んだ総合開発区として手がけられるようになった。また大学科技園内に起業する企業には国から、様々な優遇政策がとられることになりこれらの後押しで、大学科技園は大きく発展をするようになった。

目的
@技術移転の地理的距離の縮小より、大学と企業の密接な関係を構築企業は大学から必要な知的資源を、大学は企業から市場需要情報と研究開発資金の提供を受ける。技術と市場需要が繋がり、経済をより活発化させる。
A大学を中核とする企業ネットワークを形成する。科学技術だけにとどまらず、金融、法律などのコンサルティング企業を育成し、大学科技園内のネットワークから、地域のネットワークヘと発展させる。(各大学科技園は、国内各地域に公園を持ちその多くは土地開発型の工業団地風である。)
Bベンチャー企業の孵化(インキュベーション)支援。税金、資金等優遇策を実施。孵化企業は一定の期間後は、孵化器からは離れるが科技園内にとどまり、一定の優遇策を享受することができる。

中国大学科技園の5つの形態
1高新区(ハイテク産業区)と大学の共同設立で、プロジェクト単位で活動する。
2地方政府の支持の下で、大学が独自に設立。科学プロジェクト単位で動かす。
3地方政府の支持の下で、大学が独自に設立。不動産業を中心に始める。
4地方政府の支持の下で、大学が独自に設立。国家重点プロジェクトで活動する。
5地方の複数の大学が連合して、地方政府とともに設立。

 この形態ははっきりと分けられるものでなく、発展状況により重複し、また遷移するので大学科技園を解かりにくいものにしている。

 現在中国大学科技園に関しては、研究を進めておりますので、別の機会に詳細のご報告をいたします。北京訪問時、シンセンには清華大、北京大の科技園分園があると聞きました。4月に早速行ってきました。詳細には5月末詳しく調査しました。おもしろいものを見てきました。これは次回にご紹介いたします。