第3回 証券取引所について−(1)



 現在証券取引所が設置されているのは、北から札幌、東京(東証とジャスダック)、名古屋、大阪、福岡の5カ所です。かつては新潟(平成12年3月東証と合併)、広島(平成12年3月東証と合併)、京都(平成13年3月大証と合併)にも取引所がありました。「企業への直接投資の機能を持つ証券取引所は地域の経済力を高める」と言われていました。しかし、交通手段や通信技術の発達とともに距離における情報格差が縮まり、地方取引所の役割も大きく変わってきました。また、証券取引所に集まるマネーも、より効率の高いマーケットを求めるにつれ東京と大阪に取引が集中することになり地方取引所の存在が大きく低下してきました。

 現在は、かつて東京証券取引所を補完する役割としてあった店頭市場が発展的に「ジャスダック」と改組され、あわせて6つの取引所が存続する状態となりました。また、各証券取引所においては市場一部、二部と二つのグループに分けて規模の違いを示していましたが、2000年にアメリカの店頭マーケットである「ナスダック」が大阪証券取引所に進出することを受けて各取引所にもいわゆる新興市場というものが併設されることになりました。新興市場としては札幌:アンビシャス、東京:マザーズ、名古屋:セントレックス、大阪:ヘラクレス、福岡:Qボードがあります。


 表1は最近5年間における新興市場においてIPOを行った企業数の推移です。 ナスダックの日本上陸は2000年ですが、6月19日に一気に4社を上場しその年に通算で33社を数えました。東証もマザーズの拡充に積極的に取り組み、前年12月の2社を含めて29社を上場するに至りました。当時の代表的な企業を挙げてみますとマザーズでは、話題のライブドアーの前身であるオン・ザ・エッジ、バリュークリックジャパン、サイボウズ等のIT関連やスカイマークエアラインズやマネックス証券、スカイパーフェクト・コミュニケーションズらがデビューしました。
 一方、ナスダックでは、デジタルアドベンチャー、まぐクリックのIT関連に加え、イー・トレード証券や音楽情報のおりこんダイレクト、ゲームソフトのハドソン、天気予報のウェザーニューズなどがデビューしています。当時は今までに無かったような新興企業が続々とデビューし、特にIT関連が大量に上場しました。残念ながらその後、大幅な下落を招き「ネットバブル」と揶揄されることとなりました。実にマザーズの51%、ナスダックの40%がIT関連企業で占められました。

 表2は新市場が全体に占める割合を示したものです。ナスダックの日本上陸によって新興市場が開設され、そこでデビューした企業は約30%を超えていることが分かります。

 今日5年を経過して東証・大証の一部または二部市場に指定替えした企業は、マザーズから4社、ナスダックからは10社を数えています。前回ご説明したようにIPOをきっかけとして新しい経営資源を獲得し、大きく飛躍した企業もたくさんありますが、いまだに当時の状況から抜けきれずにもがいている企業も見受けられます。新市場の創設が日本のベンチャー企業の成長に果たした役割は大きいと言えますが、一方で、株式市場における粗製濫造ということも言われることとなりました。(以下次号に続く)

(このレポートは筆者の個人的見解であり、筆者が所属している野村證券(株)の見解ではありません)

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