室蘭工業大学 応用化学科助手の藤井克彦氏が、現在
進めているベンチャー設立までの軌跡をリポートしま
す。本人自らがつづる、臨場感あふれる体験談です。

【番外編】

藤井先生「井上研究奨励賞」受賞!


▲2月4日に東京・竹橋のkkr hotel tokyoで行なわれた授賞式
 「井上研究奨励賞」は、理学、工学、医学、薬学、農学などの分野で、過去3年間に博士号を取得した35歳未満(医学、歯学などは37歳未満)の研究者の中から、自然科学の基礎研究に新しい領域を開拓する可能性のある、優れた博士論文の提出者を選んで贈呈されるものです。平成14年度は、全国の60大学から推薦された153件の候補の中から30件が選ばれました。受賞者には賞状と50万円が贈られました。

 また、同賞は学位を授与された大学からの推薦が必要で、推薦されたことだけでも、日本でも有数の研究成果であると認められたことになります。藤井氏は東京水産大学からの推薦でしたが、同大学からの推薦で受賞した初めての研究者ということです。

 藤井氏の博士論文のテーマは、「内分泌撹乱化学物質nonylphenol分解微生物の探索と水環境修復への可能性」。優れた論文であったのはもちろんですが、井上科学振興財団の重藤学二・常務理事によると、この研究成果をもとに近く事業会社を立ち上げる計画であることも推薦理由にあげられており、その実利的な面も選ばれた要素のひとつのようだった、ということです。

 同財団は、自然科学の基礎研究で顕著な業績をあげた50歳未満の研究者を、関係30学会と同財団の役員・評議員から推薦された候補者から選考して表彰する「井上学術賞」の受賞者もあわせて決定しました。これには、京大・生命科学研究科教授の西田栄介氏など4氏が選ばれ、それぞれ金メダルと副賞200万円が贈られました。2月4日には東京・竹橋のkkr hotel tokyoで授賞式が行われました。

 井上科学振興財団は、不動産経営などで財を成した故 井上節子夫人が、私財5億円を投じて昭和59年5月に設立しました。夫人は若年のころから病弱で、大学病院の入退院を繰り返し、何度も命を救われたことに感謝する気持ちから、医学を含めた基礎科学に携わる研究者を援助するために、財団を設立しました。昭和59年12月にお亡くになりましたが、遺言により約30億円が同財団に寄付されました。資産総額は、現在42億円程度。顕彰制度のほか、若手研究者のフェローシップ、国際研究集会の開催経費補助、外国人研究者の招へいなどの、地道な活動を行っています。



藤井 克彦氏の略歴

◇室蘭工業大学 応用化学科 助手
◇1971年生まれ 九州大学理学部 生物学科卒業
◇奈良先端科学技術大学院 バイオサイエンス研究科博士前期課程
◇東京水産大学大学院 水産学研究科博士後期課程終了
◇専門分野:微生物工学、環境バイオテクノロジー、有用微生物の探索
 電子メール:kfu@mmm.muroran-it.ac.jp
 ホームページ:http://www.mmm.muroran-it.ac.jp/~kfu/