室蘭工業大学 応用化学科助手の藤井克彦氏が、現在
進めているベンチャー設立までの軌跡をリポートしま
す。本人自らがつづる、臨場感あふれる体験談です。

【vol.14】

実証試験、第2クール開始!

平成15年9月某日

 この1週間実証試験現場に入り、これまでの第1クールで浮き彫りになった課題を装置の部分改良により克服するとともに、現地で分解菌の培養を行い、分解菌を固定化し、装置に充填してきた。そして本日より第2クール開始。良好な運転成績が得られると良いのであるが。。。

いよいよ第2クール。大規模の排水量にも対応できるようにするため、装置の改良を日々行っている

 

9月某日

 先々週より開始した性能評価第2クールを行っているところであるが、改良のおかげで良好な分解能を発揮している。あとはどれくらいの期間、分解能が持続されるか、そしてそれくらいまで処理効率を高めることができるかを調べて行きたい。


10月某日

 分析の合間に、前から気になっていたインターネットサイトを訪れた。それは、環境省と経済産業省が共同でまとめたprtrパイロット事業の集計結果(http://www.prtr-info.jp/)、有害化学物質削減ネットワーク(http://toxwatch.xteam.jp/hp/)そしてエコケミストリー研究会(http://env.safetyeng.bsk.ynu.ac.jp/ecochemi/)である。

 prtrとは有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを企業が自己申告で年1回届け出て、行政がそれを集計し、公表する制度である。集計結果は自由に閲覧でき、今回はそれをインターネット上で閲覧したわけである。

 一方で、有害化学物質削減ネットワークとはprtrの情報を市民に分かり易く提供し、市民活動の支援を行うことで、化学物質による環境リスク削減を促進していこうとする市民団体(多分?そこらへんはちょっと不明)である。このhpの凄いところは、prtrに届け出されているデータを化学物質毎の検索はもちろん、届け出た企業名や工場名まで閲覧できる点である。そこでノニルフェノールについて検索してみると、どの会社のどの工場から平成13年はどれだけ排出された、、、ということが詳細に出てきた。これには驚きである。

 と私が拙い文章で伝えてもあまりよくわからないだろうから、環境問題に関心のある方は是非一度訪問すると良い。ちなみに、平成13年度のデータ集計を見る限りでは、やはりノニルフェノールは全国的に検出されているようだ。そしてエコケミストリー研究会は、化学物質が製造、副生、輸送、貯蔵、使用、廃棄のあらゆる段階で環境と調和するシステムを築くために情報交換することを目的に作られた会であり役員を見ると大学・研究所の専門家が多い。このhpの面白いところは日本各所の汚染具合がビジュアルに見られることである。


10月某日

 後期授業が開始。私は研究者であると同時に教官でもあるので、当然授業をしなければならない。研究成果の社会還元を目的に行っているベンチャーももちろん大事だが、授業も同等(もしくはそれ以上)に大切であり、これをサボると当然クビになる。なので、民間から代表取締役と経営担当取締役を迎えることができたのは幸運だったと思う。大学教官だけでやっていたら今月が廃業日になっていたであろう。

 授業と言っても我々若い教官(助手クラス)は座学ではなく、実習を担当する。実は昨年度より、担当科目・生物化学実験の実験内容を大幅に改訂した。学生達が日々進歩している生物工学分野に乗り遅れないように、dnaの精製と制限処理、脂質抽出、固定化微生物、酵素、情報検索と結構幅広い内容に変えた。必要があれば、年度毎にどんどん改訂版を出して行き、学生が就職して恥をかかないようにはしてやりたい。

 うちの学科は基礎化学、化学プロセス、生物工学の3つのコースに分かれているのだが、卒業研究で生物工学に来る1/3の学生はもちろん、来ない2/3の学生でも化学系の企業に就職する限りはバイオの話題を避けて通れることは先ず無いので、受講は意味があると思う。自惚れも少し入っているが、実験プログラムの内容は結構自信作である(のつもりである)。というわけで、大腸菌と酵母の大量培養にこれから取り掛かろうか。。。


11月某日

 北海道新聞に、環境省がノニルフェノールの使用を関連業界に自粛するよう要請しているとの記事がでた。『装置の事業化に追い風になりそうですね』と清野・楢崎製作所事業開発室長。学術研究レベルでは以前からその環境ホルモン作用が確認されてきたわけであるが、ようやく重い腰を上げたという感じか。事業化に向けた開発をしている我々の最大の課題は『いかにしてより大規模の排水量にも対応できるようにするかであり』今奮闘中である。清野室長によると、装置の外に取り付けた濾過装置の調子が良くないらしく、来週現場入りするとのこと。私も一泊二日の強行日程であるが(前後に実習があり、外すわけにいかないので)見てこようと思っている。


藤井 克彦氏の略歴

◇室蘭工業大学 応用化学科 助手
◇1971年生まれ 九州大学理学部 生物学科卒業
◇奈良先端科学技術大学院 バイオサイエンス研究科博士前期課程
◇東京水産大学大学院 水産学研究科博士後期課程終了
◇専門分野:微生物工学、環境バイオテクノロジー、有用微生物の探索
 電子メール:kfu@mmm.muroran-it.ac.jp
 ホームページ:http://www.mmm.muroran-it.ac.jp/~kfu/
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